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メンバーブログ(2026年3月)

【事業承継・財産承継対策を巡る裁判例から今後見るべきこととは?】

 近年、非上場株式の相続税評価を巡る税務訴訟が注目されています。特に、相続開始前の増資や配当、資産構成の変更などにより会社の評価区分を変更し、株価評価額を低減させる手法については、その適否が裁判で争われる事例が見受けられます。

 

 実務上注視すべきは、東京高裁令和7年6月19日判決です。この事案では、相続直前の第三者割当増資や配当等によって会社の評価区分を変更したことに対し、評価通達の形式的な適用ではなく、相続税法基本通達総則6項の適用が認められました。第一審(東京地裁令和7年1月17日判決)では納税者側の主張が認められていましたが、控訴審においてその判断が覆されたという経緯があります。株価引下げを主たる目的とした一連の取引について、通達評価をそのまま適用することが適当かどうかが、判断の分かれ目となった事例です。

 

 一方で、東京高裁令和6年8月28日判決のように、類似業種比準価額による評価が争われた事案において、総則6項の適用を認めず、結果として納税者側が勝訴した事例も存在します。このように、株価引下げを巡る事案であっても、裁判所の判断は個別の取引背景や事業上の合理性によって分かれており、一律の結論が導かれているわけではありません。

 

 制度面においても、議論の深化が見られます。会計検査院の令和5年度決算検査報告では、類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値の約27.2%にとどまるなど、評価方式による乖離が指摘されています。これを受け会社規模区分や評価方法のあり方について、今後も検討が行われる可能性が示唆されています。

 

 また、令和8年度に向けた税制改正の議論においても、市場価格との乖離を利用した節税策への対応として、貸付用不動産や不動産小口化商品に関する見直しの方向性が示されています。資産評価を活用した対策については、制度面からの整備も着実に進められている状況です。

 

 こうした状況下では、単なる評価額の低減のみを目的とするのではなく、企業の継続性や事業承継後の経営実態に即した、より多角的な設計が重要になると考えられます。

 

 次回の勉強会(6月24日)では、これらの最新の裁判例を精読し、実務においてどのような点に留意すべきかを検討いたします。判決に至るまでの具体的な事実関係を整理し、今後の実務指針を考える機会としたいと考えております。

 

 勉強会の詳細については、改めてご案内申し上げます。

 

〔代表理事:柿沼慶一〕

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