メンバーブログ(2025年9月)

【会社の後継者とは】
1.商売がら、中小・中堅企業の社長と面談する機会があるが、先代の長男が社長を
務めているケースを多く目にする。昭和20年の終戦以降に米国が持ち込んだ民主
主義による平等精神が広まる中、それにも拘わらず、従来の長子相続の名残なのか
長男以外の子どもが社長を務める会社は多くない。
以下、いくつか過去の事例を見てみよう。
▶実業家で名を成した渋沢栄一。後継者は長男の子の敬三。栄一は長男の篤二を後継
として期待していた。篤二も親の後ろ姿を見て育ち、次は私と意欲はあったに違い
ないが、事件を起こしたり、また生来芸術家肌だったこともあり、栄一は一族を
束ねる実業家には向いていないと危惧し、孫の敬三に望みを託した。敬三は生物
学者を志していたが、栄一の願いを受け入れ、大学は法科に進み、後に日銀総裁、
大蔵大臣を歴任する経済人となった。その後は学者を諦め、多様な学会を支援し、
戦後日本の学問の発展に貢献した。親が長男に後継を託そうとしても、子どもには
得手不得手があり、よく適正を見極めた上で判断する必要がある。
▶もう一人は「ダイヤ精機㈱」の諏訪貴子社長。兄はいたが病弱で、社長の父は妹の
貴子氏を早々に後継と定め、大学も工学部を指定、卒業後は部品メーカーに勤務
させ現場感覚を身に着けさせた。父が急逝した際、古参の社員は貴子氏に名ばかり
の社長を求めたが、コロナ禍で業績が悪化する中、会社存続を一番と考え、社長と
しての決断でリストラを断行、その後高収益会社へ変貌させる。まだ女性経営者が
少ない時代、大学の現場感覚とコロナ禍での経営体験を通じて、会社運営のノウハ
ウを会得したと思う。まだ男性社長が多い中、仕事受注の為の人脈作り等にご苦労
されたと思う。
2.最近経験した事業承継の事例として、
①長男が社長を承継→事業に失敗→二男が社長に・・・二男の経営権確保が課題
(二男への自社株の集中等)
②長男が社長、二男が専務 ・・・経営に関する意見の相違が
生じた場合の対処
③後継者が不在 ・・・生え抜きの社員に後継を託す
(自社株譲渡の資金手当て、
事業承継税制の検討等)
④親子承継ではなく、M&Aによる会社譲渡等、事業承継にはいろいろあり、
アドバイスによる承継手法の手助けが必要になる。
3.高齢期に近づきつつある社長にとって、事業承継のタイミングは難しく、不景気が
長引く中での承継はどうしても後継者の負担を考慮し怖気づいてしまう。特に創業
社長の場合、会社は大切な子供。後継者にバトンタッチして経営難にされては
かなわないと、会長として裏で会社をコントロールする。しかし時代は大きく変わ
り、事業承継が済んでいる会社もあり、若手後継者達が創意工夫してネットワーク
を駆使し、会社を発展させているのも事実。現社長には後継者を信じて会社を任せ
る胆力も持ってもらいたい。
〔岡本康〕