メンバーブログ(2025年12月)
【顧問税理士と事業承継】
当社団に所属する税理士やメンバーは、事業承継に関する法制度等の調査・研究を目的に活動しております。一方で、私たちはそれぞれ日々の税務顧問業務にも従事しています。
■事業承継支援での一つの問い
事業承継の現場での問いの一つが「いつ事業承継を始めるのか」だと思います。法人は継続企業を前提に設立されますが、経営者の時間は当然ながら有限です。
50代になったら考え始めるのか、経営が軌道に乗ってから考えるのか、後継者候補が見えてきてから考えるのか—そのタイミングは経営者によって本当に様々です。
■顧問税理士の存在
税務顧問業務を受託している税理士は、顧問先の決算を毎年組み、決算対策を講じ、この決算で銀行融資は無事にできるのか、資金繰りに問題はないか、といった日々の経営数値に気を配りながら、経営者と経営について相談する最も近い存在であります。
そんな顧問税理士にとって、なお支援が手薄になりがちなのが事業承継の領域とも言えます。毎月・毎年の決算支援に全力で向き合っているからこそ、経営者の5年後・10年後の姿を想像し、共有する時間が不足してしまう場面があるのではないでしょうか。事業承継のテクニックやスキーム、税制への理解はもちろん重要です。しかし、それ以前に、早い段階から事業承継の「出口」を共有し、語り合っておくことが、より良い事業承継につながるのだと思います。
■自分自身への戒めとして
私自身、このたび独立開業した税理士でございます。事業承継支援を中心に携わっていた勤務時代と比べると、独立後は税務顧問業務の割合が大きくなり、日々の会計・税務支援に没頭していると、「この経営者の事業承継における最適な将来像は何か」という視点を見失いそうになることがあります。
経営者の立場からすれば、今は稼ぎ時であり、10年後・20年後の事業承継まで考える余地はない、ということも少なくありません。それでも、顧問税理士が常日頃から経営者の将来に思考を巡らせ、折に触れてその未来像を共有することが、良い事業承継への一助になると考えています。
日々の税務顧問業務に追われるほど、事業承継は「まだ先の話」として後回しにされがちです。だからこそ、目の前の数字を支えるだけでなく、その先にある経営者の“出口”まで見据え、共に描き続ける税理士でありたい――この初心を忘れないための自分への戒めとして、今月のブログの結びとさせて頂きます。
〔事務局:平川〕

